新しい価値観とスタイルを提案

2025年10月
  • 葬儀後の落雁は食べても良いものか

    知識

    葬儀や法要が終わり、祭壇からお供え物を下げる際、多くの人が疑問に思うのが「この落雁は、どうすればいいのだろう」ということではないでしょうか。特に、故人のために供えられたものを口にして良いのか、罰当たりにならないかと心配する声も聞かれます。結論から言うと、お供えした後の落雁は食べても全く問題ありません。むしろ、いただくことが供養になると考えられています。仏教では、お供え物には仏様の力が宿るとされ、それをいただくことで「お下がり」として仏様のご加護を受け、故人との繋がりを感じることができるとされています。これは「お下がりを頂戴する」という考え方で、故人を偲び、命の尊さを改めて心に刻むための大切な行いなのです。葬儀後、遺族は供えられた落雁を親族や参列者、手伝ってくれた方々へ「お裾分け」として配ることが多くあります。これは、故人の供養に協力してくれたことへの感謝の気持ちを表すとともに、故人の徳を皆で分かち合うという意味合いを持っています。もし落雁をいただいた場合は、感謝して持ち帰り、ご家庭でいただくのが良いでしょう。ただ、落雁は砂糖が主原料であるため、そのまま食べるのは甘すぎると感じる方もいるかもしれません。その場合は、少し工夫をしてみるのがおすすめです。細かく砕いて、コーヒーや紅茶に入れる砂糖の代わりに使ったり、ヨーグルトに混ぜ込んだりするのも良いでしょう。また、砕いた落雁を衣にして油で揚げると、外はカリッと、中はしっとりとした独特の食感のお菓子になります。熱いお茶と一緒に、故人の思い出を語らいながらいただく時間は、きっと心温まるひとときとなるはずです。食べきれないほど大量にある場合は、無理に消費する必要はありませんが、感謝の気持ちを込めて扱い、決して粗末にしないことが大切です。

  • 突然の訃報で靴下を間違えた日の話

    生活

    その電話が鳴ったのは、平日の仕事も終盤に差し掛かった夕方のことでした。お世話になった元上司の訃報。信じられない気持ちと、すぐにでも駆けつけなければという焦りで、私の頭は真っ白になりました。幸い、会社のロッカーには最低限の備えとして喪服を置いていましたが、それはあくまでジャケットとワンピースだけ。ストッキングや靴、そして靴下のことなど、まったく頭にありませんでした。通夜は今夜。私は慌てて会社を飛び出し、自宅へ向かう途中の駅で必要なものを揃えようと決意しました。しかし、慣れない駅の周りには思うような店がなく、時間だけが刻々と過ぎていきます。ようやく見つけたドラッグストアで黒いストッキングは手に入ったものの、ふと自分の足元を見て愕然としました。その日私が履いていたのは、明るいグレーの地に小さな水玉模様が入った、お気に入りの靴下だったのです。これでは、とてもじゃないけれど斎場には上がれない。焦燥感に駆られながらコンビニに駆け込み、ようやく紳士用の黒い靴下を見つけました。サイズが合うか不安でしたが、選んでいる余裕などありません。なんとか通夜には間に合ったものの、斎場の入り口で急いで履き替える自分の姿は、あまりにもみっともないものでした。席に着いてからも、自分の準備不足が恥ずかしく、故人を偲ぶ気持ちに集中するのに時間がかかりました。この経験を通じて私が学んだのは、備えの大切さです。訃報はいつ訪れるかわかりません。喪服だけではなく、靴やバッグ、そしてストッキングや靴下といった小物まで一式を揃えておくことが、いかに心に余裕をもたらしてくれるか。それは単なるマナーの問題ではなく、故人とご遺族に真摯に向き合うための、自分自身への礼儀なのだと痛感しました。あの日以来、私のクローゼットには、いつでも完璧な状態で取り出せる喪服セットが常備されています。あの日の失敗が、私に大切なことを教えてくれたのです。