父が亡くなったのは、給料日前の月末のことでした。持病が悪化しての急な他界だったため、私たち家族には、葬儀のためのまとまった貯えなどありませんでした。悲しみにくれる母を支え、私が喪主として葬儀社との打ち合わせに臨みました。一通りの説明が終わり、担当の方が提示した見積もりは、家族葬でも百万円近い金額でした。そして、彼は申し訳なさそうにこう言いました。「恐れ入りますが、契約にあたり、こちらの費用のおよそ半分を、前金としてお納めいただいております」。その額、約五十万円。私の頭は真っ白になりました。普通預金の口座残高を思い浮かべても、到底足りる金額ではありません。父の口座にはお金がありましたが、死亡届を出すと凍結されてしまうと聞いていました。親戚に頭を下げて借りるべきか。しかし、この大変な時に、お金の話で迷惑をかけたくない。私は、恥ずかしさと情けなさで、顔から火が出る思いでした。沈黙する私を見て、何かを察した担当の方が、静かに切り出してくれました。「お客様、もしお手元にご現金がないようでしたら、クレジットカードでのお支払いや、弊社の提携しております葬儀ローンもご利用いただけますが、いかがなさいますか」。その言葉は、まさに地獄に仏でした。私は、クレジットカードであれば何とか支払えることを伝え、その場で決済を済ませることができました。あの時、もし担当の方が高圧的な態度であったり、現金払いしか受け付けない会社であったりしたら、私たちは本当に途方に暮れていたと思います。この経験を通して、私は葬儀社選びの重要性を痛感しました。費用が安いかどうかだけでなく、ご遺族の様々な事情に、どれだけ親身に寄り添ってくれるか。その姿勢こそが、本当に信頼できる葬儀社を見極めるための、何より大切なポイントなのだと、身をもって学んだのです。
私が父の葬儀で前金に困った話