生前予約と葬儀の前金支払い
近年、「終活」の一環として、元気なうちに自分自身の葬儀について考え、準備をしておく方が増えています。その具体的な方法の一つが、葬儀社との「生前予約」や「生前契約」です。この生前予約は、将来の葬儀費用に関する不安を解消する上で、非常に有効な手段となります。そして、このシステムを利用することで、遺族が直面する「前金」の問題を、根本的に解決することが可能です。生前予約には、いくつかの形態があります。一つは、葬儀の内容やプランを事前に決めておき、費用は実際に葬儀が必要になった時に遺族が支払う、というシンプルな予約です。これだけでも、遺族が葬儀社選びやプラン決めで悩む負担を大きく軽減できます。そして、もう一つが、葬儀費用そのものを、生前のうちに「前払い」しておくという方法です。この場合、契約時に葬儀費用の一部、あるいは全額を、前金として葬儀社に預けることになります。このシステムを利用すれば、いざという時に、遺族は費用の心配を一切することなく、葬儀社に連絡一本入れるだけで、事前に決められた通りの葬儀を執り行うことができます。前金の支払いに追われることも、故人の口座凍結に慌てることもありません。ただし、この生前での前払いには、注意すべき点もあります。最も重要なのが、その葬儀社が倒産した場合のリスクです。預けたお金が戻ってこないという事態を避けるためにも、その会社が、預かった前受金を保全するための措置(保証会社との契約など)をきちんと講じているかどうかを、契約前に必ず確認する必要があります。信頼できる葬儀社を選び、きちんとした契約を結ぶこと。それができれば、生前の前金支払いは、自分自身の安心のためだけでなく、遺される家族への、最大級の思いやりと愛情の表現となるのです。