火葬した遺骨をお墓に納めるのではなく、粉末状にして海や山、空へ撒く「散骨」は、大自然の一部へと還ることを願う人々にとっての究極の解放であり、その見送りの光景は従来の葬儀とは全く異なる美しさと癒やしに満ちています。海洋散骨の場合、遺族はクルーザーに乗って沖合へ出て、青い海原に向かって遺骨を撒き、その上に花びらを浮かべて、汽笛の音と共に見送りますが、そこには墓石のような冷たさはなく、母なる海に抱かれて眠るという安らぎと、世界中の海とつながっているという広がりを感じることができます。山への散骨(樹木葬の一部を含む)では、木漏れ日が差す森の中で土に遺骨を還し、風の音や鳥のさえずりを聞きながら静かに手を合わせますが、それは生命の循環の中に故人を戻す行為であり、遺族にとっても自然の中で故人を近くに感じられる癒やしの場となります。散骨による見送りを選択する場合、遺骨を全て撒いてしまうと手を合わせる対象がなくなって寂しいと感じる遺族もいるため、一部を手元に残してペンダントやミニ骨壺に納める「手元供養」と併用することも一般的であり、それぞれの心情に合わせた柔軟な対応が可能です。また、散骨は環境への配慮や近隣住民へのマナーが厳しく問われるため、専門の業者に依頼して適切な場所と方法で行うことが不可欠ですが、ルールを守って行われる散骨は、故人の「自由になりたい」という願いを叶える最高のプレゼントとなります。見送った後も、海を見れば、山を見れば、あるいは空を見上げれば、いつでも故人に会えるという感覚は、お墓という特定の場所に縛られない新しい供養の形であり、散骨による見送りは、死を生態系という大きな命の流れの中に位置づけ直す、哲学的で美しい儀式と言えるでしょう。